訓練内容

「しんがくどう」ではセラピストを中心に、各スタッフが利用児それぞれに合わせた訓練を行っております。

このページに記載されている訓練内容は、各々の評価を基にした、利用児の特性やレベルに合わせた訓練内容の一例であり、他児がここで紹介されているような特性があっても訓練内容が同じとは限りません。

※注 科学的な評価が取れず、紹介している内容の科学的根拠が理解できない方が真似をすると、お子様の誤学習や事故に繋がる虞がありますので、安易に取り扱わないようご注意下さい。

言語聴覚士

感覚特性を考慮した
前言語期の児への言語発達支援

基礎情報

【Aくん】

  • 診断名:広汎性発達障害
  • 療育手帳:A2
  • 年齢、性別:7歳、男
  • 家庭環境:父、母、本児の3人家族
  • 教育環境:支援学校在籍

来所当時(平成28年4月時点)の様子

  • 警戒心が強く、初めての事柄が苦手。
  • 集団の中に入ることが出来ず、人が少ない環境を好む。
  • ざわざわした環境は泣いて嫌がる。
  • 掃除機とCDプレーヤーで繰り返し遊ぶ。
    ※遊び方 掃除機:眺める、引っ張って歩く・CDプレーヤー:ボタンを押す、CDの出し入れをする

評価

【言語コミュニケーション面】(平成28年4月時点)

【感覚運動面】 JSI-mini(平成28年4月実施)

目標

【長期目標】(平成28年4月~平成29年4月)

  • 二者関係を築く(言語理解、表出の拡大へつなげる)

【短期目標】※3段階に分けて目標を設定

  • 第1段階:安心して過ごせるようになる。スタッフと信頼関係を築く。
  • 第2段階:自己から周囲へ意識を向ける。
  • 第3段階:人へ注意を向ける。

支援方法と結果

【第1段階】(平成28年4月~平成28年7月)

  • 支援方法
    目的:安心して過ごせるようになる。スタッフとの信頼関係を築く。
    方法:環境設定
    ・スタッフと1対1で、毎日同じ場所(密閉されていない空間)にて過ごす。
    ・関わる際は、感覚の過敏性に考慮し、ある程度距離を保つ。
    ・児と関わるスタッフを限定し、繰り返し同じスタッフが関わることで安心感を与える。
    ・警戒心が強いため、慣れるまではこちらからの働きかけは少なく、
    児のペースにこちらが合わせていく。
  • 結果
    ・少しずつ行動範囲が拡がり、自分のペースで好きなことを楽しむようになった。
    ・スタッフに対しての要求表現(手引き)が増えた。

【第二段階】(平成28年7月~平成28年10月)

  • 支援方法
    目的:自己から周囲へ注意を向ける。
    方法:・安心できる環境の下で行う。
    ・児が好きな活動の中でやりとりを行う。
    ・徐々に、様々な活動に誘っていく。
    遊びに誘う際は、警戒心を抱かせないようにスモールステップで誘う。
    (スタッフが行っているのを見せるだけ、見せながら少し距離を縮める、少し手に触れさせる…)
    ・児が活動に興味を持つ瞬間を逃さないようにする。
  • 結果:・苦手だった感覚遊び(スライムや小麦粉粘土など)も触れるようになった。
    ・バランスボールや回転いす、スクーターボードなどにも興味が出てきた。

【第3段階】(平成28年10月~)

  • 支援方法
    目的:人へ注意を向ける。
    方法:・好きな遊びを介したやりとり遊びを行う。
    ・『他者と一緒に遊ぶことが楽しい』と思えるよう、好きな遊びを用いた上で、
    発達段階に応じた関わり(→関わり方の具体例:次の以下参照)を行う。
  • 結果:・アイコンタクトが増え、表情がとても豊かになった。
    ・要求表現が増え、動作模倣が見られるようになった。
    ・音声模倣は不明瞭ながらも模倣しようとする姿が見られている。
    ・二者関係の拡がりと共に、物への興味も拡がった。

関わり方の具体例

(本児=児、スタッフ=ス)
児:周囲をふらふら歩いた後に回転いすに座る
ス:児にゆっくり近寄り、いすを左右に少しだけ揺らす
児:少しだけ表情が和らぐ
ス:いすの揺れを少し大きくする
→児の表情を見ながら揺れを大きくしていき最終的に回転させる
児:笑顔になる
ス:回転を止める
児:「あれ?」という表情をする
ス:「もう一回?」と身振りを交えて尋ね、もう一度回転させる
これを何度か繰り返す
児:もう一回してほしいときにスタッフへ手を伸ばすようになる
ス:「もう一回」と言って、身振りの模倣を示す
⇒これを繰り返していくうちにアイコンタクトが増え模倣も見られるようになった

 

最終評価

【言語コミュニケーション面】初期評価との比較(変化点を赤文字で記載)

結果のまとめ

  • JSI-miniの結果から感覚の大きな偏りと強い感覚過敏が示唆されたため、児に警戒心を抱かせないよう感覚特性を考慮した関わり(環境調整、段階をつけた支援方法、物の提供の工夫など)を行った。
    ⇒結果として、他者への意識が育まれ、二者関係の構築につながった。
  • 言語の発達促進として、コミュニケーション面に焦点を当て、発達段階に応じた関わりを行った。
    ⇒結果として、言語理解、表現の向上が見られた。

※注 科学的な評価が取れず、紹介している内容の科学的根拠が理解できない方が真似をすると、お子様の誤学習や事故に繋がる虞がありますので、安易に取り扱わないようご注意下さい。


☆ニュース☆

7月に未就学児を対象にしたことばの発達相談室を西区打越町のパーソングロー内に開設致しました。

放課後等デイサービス・ことばの発達相談室ともに言語聴覚士を募集しております!常勤・非常勤パートでも応募可能です。